http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130711/elc13071103340026-n1.htmより、
産経新聞【主張】参院選と拉致 被害者救う気概あるのか
2013.7.11 03:34 (1/2ページ)
憲法改正や経済再生が大きな争点とされる今回の参院選で、拉致問題解決を求める声が候補者からほとんど聞こえてこないのが気がかりだ。拉致は、日本人の生命と日本の国家主権にかかわる重要課題である。各党、各候補はもっと真剣に論じ合ってほしい。
自民党の安倍晋三政権が誕生して半年余、膠着(こうちゃく)状態だった拉致問題が解決に向けて少しずつ動き出す気配を見せている。
3月、国連人権理事会は、拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害の実態を調べる調査委員会を設置する決議を、全会一致で採択した。5月には、飯島勲内閣官房参与が訪朝し、拉致被害者の即時帰国や実行犯の引き渡しなど、安倍政権の基本方針を北朝鮮に伝えた。
一方、拉致問題の早期解決を求める署名数が4月下旬、1千万人を突破した。横田めぐみさんの両親ら被害者家族が16年間、全国各地を奔走した結果である。
しかし、参院選の各党公約を見ると、自民党以外は拉致問題にあまり触れていない。
自民党は公約で「対話と圧力」による「拉致問題の完全解決」をうたい、総合政策集でも、政府認定以外の特定失踪者の調査や北朝鮮への全面的な再調査要求などの具体策を掲げた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130711/elc13071103340026-n2.htmより、
2013.7.11 03:34 (2/2ページ)
これに対し、最大野党の民主党は「主権と人権の重大な侵害である拉致問題の解決に全力をあげます」と書いてあるだけだ。
他の政党も「6カ国協議を再開し、拉致、核、ミサイル問題の包括的な解決」(公明党)、「北朝鮮の核やミサイル問題、拉致問題には毅然(きぜん)と対応」(みんなの党)など、民主党と大同小異だ。
日本維新の会は、党内に拉致議連会長や元拉致問題担当相がいるのに、参院選公約に拉致問題への言及が全くない。維新は昨年暮れの衆院選でも、公約に「拉致」の文言がなく、理解に苦しむ。
安倍首相は先月、英国で開かれた主要8カ国(G8)首脳会議や東欧4カ国(V4)首脳との会談で、拉致問題解決を訴え、首脳宣言などに「拉致問題」が明記された。先の党首討論でも、安倍氏は「あらゆるチャンスを貪欲につかんでいきたい」と述べた。
拉致は、安倍政権に任せておけばよいという問題ではない。野党を含めた超党派で知恵を出し合い、力を合わせなければならない国家的課題なのである。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 7月 10 日(水)付
防衛白書―脅威を語るだけでは
不測の事態を招きかねない危険な行動を伴うものがみられ、極めて遺憾――。
13年版の防衛白書には、中国の海洋進出について、こんな記述が初めて盛り込まれた。
言うまでもなく、尖閣諸島をめぐる緊張が背景にある。
昨年9月の国有化以降、中国公船が尖閣周辺の領海を頻繁に侵犯している。1月には東シナ海で、中国軍艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃用レーダーを照射する事態も起きた。
たしかに、中国の挑発行為は目にあまる。このままでは、偶発的な軍事衝突の危険性さえ否定できない。
白書が強い懸念を示すのも当然だろう。
では、一触即発の危機をどうしたら回避できるのか。
白書が指摘するように、日中間では防衛当局間のホットラインを設置することで合意している。ところが、こんな必要最低限の危機回避策さえ、日中関係が滞っている中でいまだに運用に至っていない。
ましてや、膨張する中国とどう向きあうのかは、簡単に答えの出る話ではない。
気掛かりなのは、昨年の白書にあった「平和は防衛力とともに外交努力などを総合的に講じることで確保できる」という記述が消え、「外交努力などの非軍事的手段だけでは万一の侵略を排除できない」というくだりだけが残されたことだ。
もちろん、自衛隊が防衛のために必要な備えをすることは不可欠だ。とはいえ、あまりに軍事に偏っては、そのこと自体が緊張を高め、逆に日本の安全を損なう。ここは粘り強い外交努力とあわせた、冷静で、息の長い取り組みが必要だろう。
防衛白書には、日本の現状認識や防衛政策の方向性を国内外に示す役割がある。
東アジア情勢が流動化しているなか、日本の防衛費は11年ぶりに増額に転じた。そんな時だからこそ、日本の方針を明確に示す責任がある。
その点、今回の白書は実にわかりにくい。
例えば、集団的自衛権の行使について、「許されない」とする従来の政府見解に沿った記述がある。その一方で、憲法解釈の見直しを進めている懇談会を取りあげ、「議論を待ちたい」とも書いている。
これでは、政府の意図がわからない。あらぬ疑念を招くのは得策ではあるまい。
新たな防衛計画の大綱の策定を年末に控え、議論が本格化する。内外への丁寧な説明を怠ってはならない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130710/plc13071003380006-n1.htmより、
産経新聞【主張】防衛白書 国守る決意実行の議論を
2013.7.10 03:38 (1/2ページ)
今年の防衛白書の最大の特徴は「わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜く」との決意を打ち出したことだ。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)を力ずくで奪取しようとする中国は、領海侵入などの挑発行動をやめない。白書はこれを「不測の事態を招きかねない危険な行動」と認定し、強く批判した。
従来、白書で中国の行動を厳しく書くことには遠慮もあった。だが、「強い日本」を掲げる安倍晋三政権の姿勢を受け、国として当然の主張や国防の重要性を正面から取り上げた点を評価したい。日本の国を守る覚悟を関係国に示すメッセージともなろう。
課題は、こうした決意を防衛政策の転換や防衛力強化に、いかに結びつけるかである。参院選でも各党に論じ合ってほしい。
今回、白書は尖閣の国有化以降に激化した領海侵入や領空侵犯などの相次ぐ挑発活動に対し「極めて遺憾」と明確に非難した。中国の出方を「高圧的対応」と批判し、「力による現状変更」を試みているといった分析も加えた。
北朝鮮の核実験についても白書は「重大な脅威で断じて容認できない」ものと位置付けた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130710/plc13071003380006-n2.htmより、
2013.7.10 03:38 (2/2ページ)
弾道ミサイルの射程が「米本土の中部や西部に到達する可能性」にも言及し、警戒を強める必要性も訴えた。
これらの日本を取り巻く安保環境の悪化は明らかであり、日米同盟を基軸に防衛力強化の方向性を示したのは当然である。
だが、その実効性を高めるためには、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更が不可欠となる。白書も首相の下で有識者会議による検討が進んでいることを挙げた。政権として行使に踏み込む決断が求められている。
白書は、自衛隊に「海兵隊的機能」を持たせる意義に言及した。与那国島に沿岸監視部隊を配備することも急がれる。
離島奪還能力の向上を含め、南西諸島防衛の強化を通じて、日本は自らの抑止力を高めなければならない。
それには必要な防衛予算と自衛隊の定員を確保することが欠かせない。平成25年度の防衛費は11年ぶりに増額に転じたが、さらに大幅で継続的な措置が不可欠だ。
国民の平和と安全をどう確保するか、与野党を挙げてもっと論じる必要がある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013071002000128.htmlより、
東京新聞【社説】防衛白書と中国 信頼醸成にも力を注げ
2013年7月10日
二〇一三年版防衛白書は日本領海への侵入を繰り返す中国への警戒感を示す内容となった。毅然(きぜん)とした対応は当然だが、「不測の事態」を招かないためにも、信頼醸成措置に力を注ぐことも必要だ。
東、南シナ海で海洋権益確保の動きを強める中国の動向がアジア・太平洋地域の不安定要因であるのは関係国の共通認識だ。防衛政策に関する年次報告書の防衛白書が、中国の動向に懸念を示すのは妥当である。
特に、昨年九月の沖縄県・尖閣諸島の国有化後、中国公船の領海侵入が急増した。白書は「既存の国際法秩序とは相いれない独自の主張に基づき、力による現状変更の試みを含む高圧的とも指摘される対応」と批判している。
また今年一月に起きた、中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦などへの射撃管制レーダー照射についても「不測の事態を招きかねない危険な行動」と遺憾表明した。
射撃管制レーダーの照射は武力による威嚇に該当する。白書が指摘するように、中国側に「国際的な規範の共有・順守」を、求め続けることが重要だ。
白書では、尖閣などを念頭に占領された島嶼(とうしょ)部を奪還するため、優れた機動性を備えた「海兵隊的機能」を持つべきだとの意見や、陸海空三自衛隊が今年六月、島嶼防衛を想定した米軍との統合訓練を米カリフォルニア州で行ったことも紹介している。
領土、領海、領空を守る強い決意を示す安倍晋三首相の意向を反映したのだろう。
想定される脅威に対して必要な防衛力を整備し、訓練を積み重ねることは当然だ。しかし、専守防衛の逸脱との誤解を与えると、地域の軍拡競争を促す「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。そうした懸念にも留意すべきだ。
一方、防衛力強化や対決姿勢を強めるだけでは、緊張緩和が実現しないのも事実である。
中国の国防政策の透明性向上を図り、不測の事態を回避するには現在途絶えている防衛担当者間の交流を復活させ、信頼醸成への努力を重ねることが必要だ。
特に、レーダー照射のような事態を衝突につなげないためには、ホットラインの設置や艦艇、航空機間の連絡メカニズム構築を実現に移すことが急務だろう。
これらは日中間でいったん合意しながら、尖閣国有化を契機に棚上げ状態だ。日本側は早期の運用開始を働き掛けているという。粘り強く説得を続けるべきである。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57182770Q3A710C1EA1000/より、
日経新聞 社説 厳しい安保観に見合う防衛を
2013/7/10付
難しい問題に取り組むには、現状の正しい分析と、それを踏まえた迅速な行動が欠かせない。日本の防衛にも同じことがいえる。
政府は閣議で、2013年版防衛白書を了承した。これまで「不透明」などとしてきた日本の安全保障環境について、初めて「厳しさを増している」と表現した。
中国による軍備の増強や、北朝鮮の核兵器とミサイルの開発だけみても、当然の認識といえよう。大切なのは、年内にまとめる新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)に具体的な対策を盛り込み、早急に実行に移すことだ。
とりわけ急がなければならないのは、尖閣諸島などへの揺さぶりを強める中国への対応だ。最近、中国は監視船だけでなく、海洋調査船も尖閣沖に送り込んでくる。
領海警備は一義的には海上保安庁の役目だが、いざという危機にそなえ、海保と自衛隊の連携を強めておくことも大切だ。占拠された島を奪還する能力をもった自衛隊部隊の拡充も急ぐべきだろう。
防衛白書では日本近海での中国の強硬な行動が、「不測の事態を招きかねない」とも警告した。1月には、中国軍の艦船が自衛隊の護衛艦に射撃用レーダーを照射する事件が起きており、あながち誇張とはいえない。
中国に挑発をやめさせるには、米国と結束し、強い抑止力を保つことが重要だ。意図しない衝突を防ぐため、緊急時に連絡をとれる体制をつくるよう、中国に促していくことも忘れてはならない。
防衛白書では、北朝鮮のミサイル開発について「新しい段階に入った」とも分析した。北朝鮮が核爆弾の小型化に成功すれば、すでにミサイルの射程内にある日本は重大な脅威にさらされる。日本はまず、米国とのミサイル防衛協力を加速することが欠かせない。
日本への脅威はサイバー空間にも広がっている。有効なサイバー対策を打つためにも、防衛省、警察庁といった関係省庁は縦割りの弊害を排し、緊密に協力してもらいたい。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130710k0000m070114000c.htmlより、
社説:防衛白書 「安倍カラー」が満載だ
毎日新聞 2013年07月10日 02時32分
沖縄県・尖閣諸島周辺の中国の海洋活動や、北朝鮮による核実験、事実上の弾道ミサイル発射により、日本を取り巻く安全保障環境は、この1年で格段に厳しさを増した。「戦後最悪」との指摘もあるほどだ。
2013年版の防衛白書は、こうした現実を反映し、中国、北朝鮮などの動向に強い懸念を示した。そのうえで、南西諸島や弾道ミサイル防衛の重要性を強調し、日米安保体制や日本独自の防衛力強化を訴えた。
中国については、領海侵入、領空侵犯、海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への射撃用火器管制レーダー照射などを挙げ、中国軍が海上戦力だけでなく、航空戦力による海洋活動を活発化させていると指摘。「不測の事態を招きかねない危険な行動を伴うものがみられ、極めて遺憾」と批判した。
北朝鮮については、弾道ミサイル開発が「新たな段階に入った」と分析し、核開発問題とあいまって「現実的で差し迫った問題」と強い懸念を示した。
中国、北朝鮮いずれに対してもこれまでにない厳しい表現が目立つ。
また白書は、集団的自衛権見直しの検討状況や、自衛隊に海兵隊的機能や敵基地攻撃能力を持たせる議論について、安倍晋三首相の意欲的な国会答弁を交えてコラムで紹介した。「安倍カラー」満載の感がある。
背景には、参院選後に控える集団的自衛権の行使容認を巡る議論や、年末の新たな「防衛計画の大綱」策定、来年度予算編成での防衛関係費の確保につなげようとする首相官邸と防衛省の狙いがうかがえる。
厳しい安全保障環境に対応するため、いま日本がやるべきことは何だろう。防衛力強化は必要だ。だが、それだけでは十分とはいえない。
例えば多国間・2国間での安全保障対話や防衛交流を、お互いの信頼醸成や不測の事態を回避するために、もっと進める必要がある。
日中間では防衛当局間のホットライン設置など海上連絡メカニズムの構築が合意されたが、運用が開始できないでいる。日韓間では、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が、韓国世論の反発で締結が見送られたままだ。白書はこうした防衛交流・協力にも触れているが、あっさり説明しているに過ぎない。
米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイの沖縄配備についても、人口密集地域上空の飛行を避けるなど日米が合意した運用ルールに違反した飛行が報告されているにもかかわらず、「引き続き合意が実施されるよう米側への働きかけを行っている」と冷淡な記述にとどまったのは残念だ。
防衛力強化に前のめりなだけでは、国民の理解は得られない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130709k0000m070106000c.htmlより、
社説:視点 対外情報発信・米「疑日派」なくそう=布施広
毎日新聞 2013年07月09日 02時31分
最近の米国には「疑日派」が目立つそうだ。日本となじみの深い米国にはもちろん親日派も知日派もいるし、時に反日、嫌日派もいるが、ある米国ウオッチャーによると、安倍晋三首相の政治姿勢に漠たる疑問や危うさを覚える人も少なくない。これを疑日派と呼ぶわけだ。
たとえば彼らは麻生太郎副総理の靖国参拝や歴史認識をめぐる安倍首相の発言に加え、首相の「ムキになりやすい」姿勢にも首をかしげる。安倍氏が最初に首相になった時に唱えた「戦後レジームからの脱却」も、米国人の目には米国主導の戦後秩序への挑戦と映りかねない。
米国から常に真意を、時には痛くもない腹を探られる傾向があるのは安倍氏の宿命のように思える。と同時に、終戦から70年近くが過ぎて中国や韓国との関係が冷え込む今、多くの国民の胸に浮かぶのは、果たして日本の平和外交は国際社会に正しく理解され共感を得てきたか、という問いではなかろうか。
たとえば尖閣問題に関する中国側の振る舞い、特にレーダー照射や度重なる領海侵犯は国連憲章の精神に反しているが、では日本への国際的な同情や支援が強まったかといえば、そうでもない。欧米などのメディアの論調は時に日本に冷淡だ。
東京財団の渡部恒雄・上席研究員は「広報外交の不足」を指摘する。その象徴として渡部氏が挙げるのは、1957年に外務省の財政支援でワシントンに設置された日本経済研究所(JEI)が2001年、予算カットにより活動を休止したことだ。韓国が創設した同様のシンクタンクは米政府の元高官らを運営メンバーとして今もワシントンで活動を続けている。
これは氷山の一角で、日本は情報発信に関連する予算を削り続けてきたと渡部氏は言う。経団連も09年、ワシントン事務所を閉鎖した。尖閣をめぐる宣伝戦で日本が中国や台湾の後塵(こうじん)を拝しても不思議ではない。米国では韓国もロビー活動に必死だ。自国が正しくても、その主張を正しく理解してもらうには広報活動が不可欠、という意識が日本には薄かったようだ。
参院選の公約(領土・主権)で自民は「国内外に対する積極的な普及・啓発・広報」、民主も「積極的な対外発信」に言及するなど各党の関心は低くない。問題は、いかに長期的かつ多角的に実践するかだ。日本への理解が進めば、あるいは疑日派も雲散霧消しよう。だが、一時しのぎで終われば、国を挙げて「三戦」(世論戦、心理戦、法律戦)を推進する中国に煮え湯を飲まされるかもしれない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130703k0000m070143000c.htmlより、
社説:参院選 問われるもの…歴史認識
毎日新聞 2013年07月03日 02時31分
◇参院選 問われるもの…歴史認識 立場をもっと明確に
歴史認識問題への各党公約での言及は思った以上に少ない。確かに、政策として前向きなものではないし、党内で一致した見解を作るだけでも骨の折れる仕事であろう。
ただ、この問題はいったん火がつくと国内はもとより、中国、韓国を中心としたアジア、ひいては欧米まで巻き込むグローバルな論戦となり、日本の外交・安保政策に多大な影響を与える。政策選択を問う上で重要な争点の一つに数えたい。
そもそも歴史認識とは何だろう。あの大戦を歴史的に総括、反省し、その教訓を未来に生かしていくための基本認識ではないか。原点は、1952年4月の講和条約発効(独立)にある。そこで日本は、戦争指導者が処刑された東京裁判の結果を受け入れ、国際協調の道を歩むことを誓ったはずである。従軍慰安婦問題についての見解をまとめた河野談話(93年)、戦後50年の節目に反省と謝罪を発信した村山談話(95年)、それを踏襲し不戦の決意を誓った小泉談話(2005年)もすべてその延長線上に積み上げられてきた。
その観点からすると、昨今の安倍晋三首相の言動は危うさを感じさせるものがある。村山談話に対して「侵略の定義」部分に異を唱えたと思えば、一転継承すると軌道修正する。または、歴史認識は学者の仕事で政治家は言及すべきではないと突っぱねる。建前と本音を使い分けているようにも見え、不安感が残る。
党首の立場をはっきり読み取りたい、という目には、自民党公約は物足りない。中韓との関係発展をうたうのみである。ただ、公約を解説する同党総合政策集の中では、領土・主権・歴史問題に関する研究機関を新設し、慰安婦問題で不当な主張には的確な反論を行う、としている。事実関係の研究は否定しないが、重要なのは政治的メッセージである。
民主党公約も「共生実現に向けたアジア外交」とあるが、歴史認識に踏み込んでいない。領土、慰安婦をめぐり中韓とやり合った政権政党としての体験を昇華した現実的な建策が欲しい。安倍政権に対して大きな論争を挑める分野ではないのか。
維新は、慰安婦問題について「歴史的事実を明らかにし、国や国民の尊厳と名誉を守る」としている。橋下徹共同代表の一連の発言を受けてのものなのだろうが、とってつけたような印象も受ける。
いずれにせよ、この問題については、靖国参拝を含めて国民には聞きたいことがたくさんある。先人たちの努力の成果を踏まえ、何をどう引き継ぎいかに発展させていくか。各党首はもっと明確に語ってほしい。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130702k0000m070121000c.htmlより、
社説:参院選・外交・安全保障 中韓との関係を語れ
毎日新聞 2013年07月02日 02時33分
安倍晋三首相は半年間で、米国、ロシア、東南・中央アジア、中東、欧州の計13カ国を訪れた。「世界地図を俯瞰(ふかん)する外交」と首相は自賛する。そこに流れるのは、日米同盟を強化する一方、自由や民主主義などの価値観を共有する他の国々とも連携を深め、日本の外交基盤を固めた上で、中国と向き合う考え方だ。
領土や歴史を巡る対立で中国、韓国との首脳会談ができない中では、こうして周辺国を固める外交方針をとったことはやむを得ない面があっただろう。ただ、それだけでは中韓両国との関係は改善できない。
日中関係の行き詰まりは、中国側にも責任がある。日本側が条件なしに首脳会談を開くよう求めているのに対し、中国側は沖縄県・尖閣諸島を巡る領土問題の存在や棚上げを会談の前提条件として認めるよう要求しているようだ。
だが日本側にも原因がある。首相は先の大戦について侵略行為を否定したと受け取られかねない発言をした。他にも安倍政権の歴史認識について「右傾化」と疑われるような言動が続き、中国側に「安倍首相は、本当に日中関係を改善したいと思っているのか」との疑念を与えている。
韓国とは日韓外相会談が約9カ月ぶりに開催され、関係改善の兆しが出てきた。とはいえ、朴槿恵(パク・クネ)大統領は日韓よりも中韓関係を優先しているように見える。
日米関係で首相は、沖縄県・米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を推進し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加を表明し、今年度の政府予算で11年ぶりに防衛費を増額するなど、同盟強化策を次々と打ち出した。だが、このまま中韓との関係改善が遠のけば、東アジアで日本の存在感は低下し、日米同盟にも影を落としかねない。
参院選で首相と各党は、中韓との関係をどう改善し、再構築していけばいいのか、考え方を示してほしい。
各党は公約で表現はそれぞれ異なるが、日米同盟の強化、中韓との関係改善、領海警備体制の充実などを掲げた。だがどう実現するかについての議論は低調だ。
参院選後はさらに難題が待ち受ける。首相は今秋にも集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈変更に踏み込む構えだ。年末にはこれを反映させた新たな防衛計画の大綱をまとめることにしている。終戦記念日や靖国神社の秋季例大祭に首相や閣僚が靖国参拝するのかどうかという問題もある。
首相はこれらの課題を国内外の理解を得ながらどう進め、それに各党はどう対応するつもりなのか。今後の論戦に期待したい。